ベルギーGP、スパ・フランコルシャンの予選。ジョージ・ラッセルのマシンに「何かがおかしい」という声が、海外のコミュニティで一気に燃え上がった。
発端は、チームメイトのキミ・アントネッリとのQ3アタックをテレメトリーで並べた1本の投稿。投稿によれば、ラッセルはコーナーではむしろ速く、オー・ルージュでも速度を乗せている。なのにストレートに入った途端、まるで壁にぶつかったように時間を失っていくという。この「コーナーで速く、直線で遅い」という不可解な現象を、ファンが解剖し始めた。
前提として、2026年のF1は電気の比重が跳ね上がった。パワーユニットはエンジンと電気モーターがほぼ50対50。MGU-Kの出力は従来の3倍にあたる350kWまで増え、どこでエネルギーを回収(回生)し、どこで放出(デプロイ)するかが、そのままラップタイムを左右する。溜めた電気をストレートの途中で使い切れば、終端で伸びが頭打ちになる。いわゆる「クリッピング」だ。DRSが廃止され、可変ウイングのアクティブエアロとオーバーテイクモードに置き換わった今、直線が遅い理由が「空力抵抗(ドラッグ)」なのか「電気の使い方(デプロイ)」なのか、その切り分けが議論の核心になった。
その投稿でスレ主が示したのが、FastF1のテレメトリー(本人も「完璧ではないが、大まかな分析には十分だろう」と断っている)を使ったセクター別の比較だ。ラッセルはコーナーではアントネッリに先行しているのに、全開区間に入るたびにじわじわ差を詰められ、最後には一気に置いていかれる。スレ主が挙げた要点は次の通り。
| セクター | スレ主の指摘(FastF1テレメトリー比較) |
|---|---|
| S1 | T1通過でラッセルが0.07秒先行。オー・ルージュからラディヨンでも速度を乗せる。しかしレ・コンブ手前では0.02秒差まで縮小し、全開区間で約0.05秒を失う。 |
| S2 | ターン9の脱出もプーオンへの進入もラッセルの方が速い。だが全開のプーオンでアントネッリより5km/h多く失速し、ファーニュ到達時には0.1秒超を失う。 |
| S3 | スタベロの脱出からターン16までは互角。ところがポール・フレールでラッセルだけ最大10km/h遅くなり、バスストップまでで約0.25秒を失う。 |
スレ主の見立てでは、ラッセルはこの1周の全開・直線区間だけで少なくとも0.4秒を失っている。コーナーではこれだけ拮抗しているのだから、セッティングでこうなるとは考えにくい。本人いわく、これは今回に限らず毎レース起きているという。仮にマシンが正常でも、リバージュとバスストップでアントネッリが0.1秒ずつ上回っていたため予選はアントネッリが勝っていた可能性が高い。それでも、まともに戦えていれば際どい一騎打ちになっていたはず。それが奪われている、というのがスレ主の嘆きだ。
そしてこの話は、1回の予選だけの話にとどまらない。「アントネッリとの差はそもそもどこから来ているのか」という、シーズンを通した疑問にまで飛び火することになる。
ストレートで消えていく0コンマ数秒
こうやって並べられると、直線での失い方が本当に露骨だ。特にポール・フレール、あそこは実質ただの緩いキンク(折れ)なのに10km/hも垂れてる。あれはセッティングのトレードオフなんかじゃない、マシンがデプロイできてないか、ドラッグを引きずってるかのどっちかだ。ストレートでMGU-Kがフルに効いてないバッテリー放出の問題か、あるいはリアウイングのフラップがわずかに開いてドラッグになってるとか、その手の間抜けなトラブルかもしれない。メルセデスは昔から原因不明の気まぐれなトラブルを抱えがちだからな。最終セクターの0.25秒がまるっと蒸発するのはえげつない。エネルギー放出のトレースを重ねて見てみたい、絶対アントネッリより早い段階でクリッピングに入ってるはずだ。
スパは1周7km超の高速コース。名物のオー・ルージュからラディヨンにかけての登り、その先に延びるケメルストレート、中盤の全開高速コーナーであるプーオンやポール・フレールなど、全開区間がとにかく長い。だからこそエネルギーの使い方の差が、他のコースより残酷にタイム差として表れる。
オンボードで見てても同じことに気づいた。ラッセルのマシンは300km/hあたりで壁にぶつかったみたいに伸びが止まるのに、キミの方はそのまま引っ張っていく。MGU-Kの輸送用ビニールを剥がし忘れてるんじゃないか、ってくらいの差だ。メルセデスならとっくに解決してそうなものなのに、現実はこのザマ。
直線速度の落ち込みっぷりが決定的な手がかりだと思う。より速い速度で全開区間に入っていってるのにタイムを失うって、これはパワーユニットの問題というよりドラッグの問題を強く示唆してる。PUの問題ならコーナーの立ち上がりにも出るはずだけど、ラッセルのセクター1の立ち上がりは普通に見える。プーオンのデータが特に興味深い。より速く飛び込んでるのに全開高速コーナーで5km/h失うのは、相当な空力抵抗か、高速域特有のデプロイ問題を疑いたくなる。ボディワークの不具合なのか、エアロ設定なのか、高速域でのERS放出プロファイルなのか、これ以上はデータがないと分からない。でも何かがおかしいのは確かだし、もし毎レース続いてるなら、メルセデスは相当まずい。
別の誰かがもっと正確なやつを上げてた。バックストレートだけで、0.15秒差が0.5秒差まで広がってる。ただ、これは意図的なバッテリー放出の差ではありえない。放出はラップタイムが最大になる場所を計算して決めてるんだから、2台とも同じ配分になるはずだ。
昨日、答えが出てなかったか? 全部デプロイ配分の話だったはず。アントネッリが全く放出しない区間があって、それでも同じ速度を維持できてるから、後半に回すバッテリーを多く残せてる、という説明だった。
カギはドライビングか、ソフトウェアか
FP3でSkyの解説陣がジェームズ・ボウルズに「なぜチームメイト同士でここまでラップタイムが違うことがあるのか」と聞いてた。彼いわく、エネルギーの回収と放出、それを制御するソフトが複雑すぎて、ストレートでのシフトのタイミングひとつでも、直線終端で使える電気の量に無視できない差が出るらしい。キミはジョージより早めにシフトアップして、遅めにシフトダウンする傾向がある。普通に考えればジョージの方が低いギアで高回転を長く使えて有利そうなのに、キミのやり方の方がメルセデスのソフトと相性がいいのかもしれない。
アントネッリの方が回生を上手くやってる可能性はないかな。コーナーの速度を犠牲にして、その分をストレートでの放出に回してるとか。あるいはその両方かもしれない。
これはこの前ずっと考えてた。ジョージはコーナーをすごくスムーズなラインで走るけど、キミはもっと鋭く、アグレッシブに向きを変える。当然ブレーキングの仕方も変わってくるし、実際チャートを見ると2人のブレーキトレースには微妙な違いがある。俺はマシンの問題だとは思ってなくて、回生をどう引き出すかの微妙な差がキミにタイムをもたらしてる、という読みだ。放出と充電のデータを重ねたチャートを見たいけど、メルセデスがそんな企業秘密を出してくれるわけがないよな。
あと、放出には学習や適応の要素が絡んでる可能性も忘れちゃいけない。アウトラップで何か違うことをやってると、それが本アタックの挙動を微妙に変える、なんてこともありうる。
テレメトリーを見る限り、今回に関しては必ずしもそうとは言えない(完全には否定できないけど)。ラッセルが大きく失ってるのはターン14以降で、2人のシフトタイミングはほぼ同じだった。
でも本当にドライビングの問題なら、なぜラッセル側のエンジニアが「直せ」と伝えないんだ?
そもそも原因はチームも掴めてない。ラッセル本人がそう認めてる。少なくともドライビングスタイルの問題ではない、というのはチームが明言してる。
バッテリーの劣化か、それとも個体差か
このストレートで大量にタイムを失う傾向って、いつから続いてるんだ? ラッセルとアントネッリの差がどこから来てるのかずっと気になってたけど、これを見ると今季かなり前から起きてたんじゃないかと思えてくる。
オーストリアからだ。バルセロナではラッセルはストレートで何の問題もなくて、アントネッリと互角かむしろ上だった。それがオーストリアでいくつかパーツを交換してから、何をやってもストレートでタイムを垂れ流すようになった。
キミはどのみち速い。これはあくまで、直線が重要なコースでその差がなぜここまで大きくなるかを説明してるだけだ。
それは筋が通ってる。キミは今年ほんとに驚異的だけど、ラッセルとの差が時々あまりに大きくて、正直信じられないレベルでショックを受けることがある。
単純にバッテリー(かMGU-K)が劣化してきてるだけかもしれない。ノリスは新品のバッテリーを入れて、そこから急に上位に来たし。
これシーズン序盤に話題になったのに、すっかり議論から消えたよな。知らない人もいるかもしれないけど、チームはその週末にバッテリーをどれだけ強く使うかを選べる。代わりに消耗が激しくなって、後でツケを払うことになる。ここも我々視聴者には完全にブラックボックスだから、ジョージがキミと比べてどんなバッテリー寿命の状態にあるのか、外からは知りようがない。
それかもな。レース3からずっと同じユニットを使い回してるし、基数制限がある以上、毎週末ポンと新品に載せ替えるわけにもいかない。
カナダの後、あのマシンに何が起きたのか解明には数ヶ月かかる、なんて言ってたのが俺には信じられないよ。
速く曲がるほど遅くなる 2026年F1への複雑な視線
ようこそF1 2026へ。ここではコーナーで速度を乗せて、実際に速く走ろうとするほど、逆に遅くなる。バッテリーを十分に充電しないとストレートで損をする、という世界だ。これが行き着いた先かと思うと、正直悲しくなる。
本来出せるはずの速度より45km/h以上遅いマシンが走ってる。唯一盛り上がるのは、マックスのウイングが閉じない時くらいだ。
まあでも、オーバーテイクはあるじゃないか(棒)。
皮肉なことに、それシルバーストンでジェンソン・バトンがSkyで言ってたやつだと思う。
詳細な分析ありがとう。控えめに言って頭がおかしくなりそうな話だ。ソフトウェアが勝負を殺してる。ジョージ坊やはこの間ずっと自分を責めてたか、幽霊がマシンをぶっ壊したとでも思ってたに違いない。彼のマシンはセクター3でも、同じスロットル・同じギアなのに回転がずっと大きく落ちる。あれが本当に理解できない。
もしそれがエンジニアですら理解できないランダムなソフトの気まぐれなら、ラッセルが適応するのは物理的に不可能だ。どんなに才能があるドライバーでも、フィードバック(マシンからの体感か、エンジニアからの情報)がなければ、対処のしようがない。
その微妙な差は、他チームのドライバー間のギャップも説明できるのかもしれない。シーズンが終わる頃には、みんながこのマシンを理解しきって、多少は均されると俺は睨んでる。こういうところがこのスポーツを好きな理由の一つだ。良くも悪くも恐ろしく技術的で、必死に頭をひねって理解しようとするのが楽しい。
チームも答えを持っていない
予選後にトトがインタビューを受けて、ずっと原因を探ってきた、あらゆる可能性を潰してきた、それでも根本原因にはたどり着けていない、と話してた。分かりやすい部分は、アントネッリの新品パワーユニットから来ている分の差だ。それにバッテリーは個体ごとに性能が同じではないし、充電と放出を司るソフトも気難しい。コーナーで速度を乗せすぎることが、ラッセルの充電フェーズを損なってる可能性もある(例の、F1の精神に反すると全ドライバーが文句を言っているあの現象だ)。結局トトは、この差のうち0.2秒分はどうしても説明がつかない、と言っていた。
ラッセルが1コーナーの先でペースを完全に失って、そのままグラベルに飛び込むのを見て、このスレッドに戻ってきた。やっぱり君の言う通りだ。今週末、彼のマシンには何か深刻な問題があったんだと思う。
実際に0.2秒分失っているのだとしたら厳しいな
出典:r/F1Technical


ラッセルには良い流れを掴んでほしいな〜