アストンマーティンが、シーズン前半をまるごと差し出して作り込んだBスペックのAMR26を、ついにハンガロリンクに持ち込んだ。FIAへの提出書類によればアップデートは16点。新しいノーズ、完全新設計のフロア、サイドポッド開口部の変更、リア周りの刷新、そして軽量化されたシャシーとギアボックス。フロント周りの変更にはクラッシュテストと再ホモロゲーションまで必要だった、実質的な別マシン。
そのデビュー走行は、開始36分で片方が終わった。ランス・ストロールの左リアサスペンションがターン2出口で破損して360度スピン、赤旗。スペアパーツが足りず修復が間に合わず、FP2は走行なし。チームは予選に間に合わせるためスペアを空輸しているという。
ニューウェイの説明は「壊れた部位は今回変更していない」。一方でフェルナンド・アロンソはFP1で13番手(シャルル・ルクレールから2.475秒差)、FP2は19番手。そして両車のオンボード映像には、開幕当初にチームを苦しめたあの振動の再来を思わせる振れが映っていた。ニューウェイはそれを「ホンダへの質問だ」と振り、アロンソは「FP2ではだいたい直った」と言う。ペドロ・デ・ラ・ロサは「ホンダが把握している」「シーズン序盤とは種類が違う」と説明した。
今季ここまでの獲得ポイントは、モナコでアロンソが拾った1点のみ。そこにこのアップデートである。期待と不安の比率がおかしくなるのも無理はない。
ストロール車のリアサス破損、タイヤ痕から始まった原因論争
そうは見えないな。俺には、折れなかった外側のタイヤにホイールスピンの痕が見えるだけだ。内側のタイヤからは何も見えない。まあ原因はそのうち分かるだろう。
いや、反対側はもう折れてたんだよ。ホイールスピンかどうかは関係ない。破損のせいでクルマが横を向いてたからああなった。
ニューウェイは「アップデートしていない部品が壊れた」と言ってる。
新しい部品は、新しい荷重や振動を持ち込む。それが「変更していない」部品を壊すことはある。クルマはシステムなんだ。
ニューウェイの発言は「その領域は実際には変更されていなかった」というもの。ただし彼は同時に「外装まわりが違うのでスペアが足りていない」「原因が分かるまではこれ以上コメントできない」とも述べている。
いやいや、話してたのはタイヤ痕のことなんだが。
議論を続ける価値がないと判断しただけだ。キーボードの前から、何が起きたかの決定的な証言なんて出せるわけがない。俺が出せるのは、そう見えたという推測だけだよ。
アロンソのリアサスは、ストロールの一件のあとで元に戻したらしい。旧スペックに戻したってことか? それとも何かをテストしてたのか?
壊れたサスの部品は新スペックじゃないと発表されたが、あのストロールの壊れ方を見た後で、ニューウェイが部品を交換したくなる気持ちは分かる。セナの94年とかもあるしな。
あるいは、新しいリアサスがそもそも機能していないのでは? 新型がランスの車を壊した。両車とも振動が出ていた。旧サスに戻してFP2で振動が消えたなら、そこに関係があると推測することはできる。ニューウェイの回答も、どうも本心に聞こえない。息子のマシンが危うくウォールに刺さりかけて、ストロール・シニアからの圧力を感じているんじゃないか。あのスピンをストロールが見事に止めたのは、もしかするとニューウェイの職を救ったのかもしれない。
アロンソのセクタータイム検証で始まった深夜の答え合わせ
アルピーヌにアタックを潰される前の、アロンソのセクタータイムを知ってる人いる? オンボードで見た限りではかなり良さそうだった。
ベストセクターを足し合わせると1分21秒236になる。ロングランでは振動が消えていたようだ。今夜は見るべきデータが山ほどある。明日に向けてどこまでクルマを良くできるかだな。
実際には他チームの半分しかデータを取れてない。しかも赤旗だらけだった。
フロービズ以外は一通り消化できたと思うけど。
フロービズは終盤の数分で使ってたよ。
彼はアウトラップだったと思う。そもそもアタックラップを始めてすらいない。
いや……ちょうどその瞬間、ライブタイミングの画面を見ていたんだ。アロンソがアウトラップを終えるところで、次のアタックのセクタータイムを追おうと注目していた。そうしたらピットに入っていった。コラピントのクラッシュによる赤旗のせいで。100パーセントとは言わないが、自分が見たものにはそれなりに自信がある。
ソフトでの最後のプッシュラップを、ロングラン用の燃料を入れるためにピットインする直前、ラップ終盤で取りやめたんじゃないか?
俺も見ていた。ソフトでの周回数はゼロ(つまりアウトラップ)で、アタックを始める代わりに赤旗でボックスに入った。ほぼ間違いない。ライブタイミング側が間違ったデータを出していない限りは。……まあ、忘れてくれ。
断言するが、あれはアタックラップだった。俺がライブで見ていた3本目だ。F1TVがオンボードにライブタイミングを出さないのが本当に馬鹿げている。彼は最終コーナーの一つ手前で、青いマシンに完全に邪魔された。アルピーヌかウィリアムズのどちらかだ。だからセクタータイムを聞いたんだよ、あそこは決めたように見えたから。オンボードを見始める前には1分21秒3を出していて、それは track limits で削除されている。スペインのメディアによれば、コースを外れたぶんタイムをロスしたらしい。Q1突破できる速さはある。ただし、かろうじて。トップまではまだ遠い。
彼は新品ソフトのアウトラップ中、最終コーナーの一つ手前あたりでコラピントがクラッシュして、そのまま直行でピットに入った。ソフトでの周回はすべて赤旗中断のあとだ。ラップタイム閲覧サイトで各周の時刻を確認すればいい。最後のミディアム周回から最初のソフト周回まで20分空いている。
コラピントのクラッシュの話は一切していない。コラピントのクラッシュはその前だ。彼のラップを潰したマシンは、アタックラップに入るところだった。俺はライブで見ていたが、そっちが見ていたのはネット上の当てにならないデータだろう。
それではっきりした。俺が見ていたのは、新品ソフトでのアタックを潰したコラピントのクラッシュのほうだ。そっちは別の場面の話をしていた。
そう、赤旗のあとの一連の周回だ。少なくとも5、6周は連続して走っている。もっとかもしれない。ピットに入ったその周で、アタックに入った青いマシンに前を塞がれた。そのあとロングランに移行している。
とげを抜いて言うと、彼が指していたのはソフトでの3本目の予選アタックのことだ。アルボンが(おそらくレース燃料で)遅く走っていて、アロンソがセクター3で追いついてしまい、ダーティエアでラップを捨てざるをえなかった。
みんな順序が逆だ。まずは明日に向けて新しいセットアップを出すべきだろう。とにかくデータを集めることと、やるべき仕事が山ほどある。
FP2でのアロンソのセクター3は、ストレートがほとんどない区間だが、マクラーレンと同等だ。エンジンが少し上がれば、AMR26はグリッド上位で本気で戦える存在になりうる。
振動は戻ったのか、それとも別物か
まずいのは、本当にまずいのは、振動が戻ってきたように見えることだ。アロンソが何度かステアリングから手を離していたという報告まである。シーズン序盤とまったく同じだ。この映画は前にも観た。
彼が手を離していたのはシートの中で座り直すためで、見た限り振動のせいじゃない(エンジンの振動でずり落ちていたなら話は別だが)。何度も手を下に伸ばして、体を後ろに押し戻していた。今年は何人かのドライバーがドライビングポジションに苦しんでいるようだ。
この振動とやらの証拠を、俺は一切見ていない。
アロンソは、FP2では振動はほぼ直ったと言っている。
それは妙だな。どこかでFP2のほうが悪化したと読んだんだが。
前と同じ種類の振動かどうかは分からない。7速でレブの上のほうに入ると、はっきり音として聞こえる。そこまで行かないとあまり気にならない。
アロンソの実際のコメントは「今日はメインストレートで振動が出ていた、特にFP1で。FP2に向けてチームがだいたい直してくれたので、明日への不安はない」というもの。一方でThe Raceによれば、ニューウェイは振動について「あれはホンダへの質問だ。彼らはデータで見えているし、解決に取り組んでいる」と答えている。
妙な話だ。シーズン序盤に振動が出て、直して、新しいクルマと旧エンジンの組み合わせでまた出てきた。それなのにホンダが何かできる、と。過去の経緯を考えると、「我々が取り組んでいて、消し込めると思う」とでも言わずにホンダ側に丸投げするのは少し素っ気ないんじゃないか、とも思ったが、言葉を深読みしすぎかもしれない。どこかでアロンソがFP2では改善したと言ったという話も見た。事実なら不可解で、同時に興味深い。
FP2の途中で直ってるんだから、まだその話を続けてる理由が分からない。それに、ホンダが直したのかAMRが直したのかは発表されていない。新型ホンダPUはすでにハンガリー入りしていて、来週、新車で走るフィルミングデーに使われる。
振動を消すために大量のウェイトを積んだという話もあった。その一部が今回の新シャシーでは外れているんだろう。だからザントフォールトからの新型PUにも振動対策が入っていることを願う。今週末だけ新シャシー+旧PUという組み合わせになっているのには、少なくともそういう理由もある気がしている。
新しいシャシー用にダンパーを調整し直す必要があったんじゃないか。
振動について言えることはそれだけだと思う。それ以上は要らない。
犯人はシャシーかPUか
Q1は抜けられないと思う……
無理だな。エンジンがひどい。望みは、新しい仕様が現行より大幅にマシであることだけだ。
アップデート自体はかなり良さそうだ。性能の伸びは大きいし、セットアップからまだ稼げる余地もある。ただエンジンの問題が大きすぎて越えられない。ホンダが改善しないなら、チームがどれだけ空力をやっても無駄になる。しかも振動がまた出ている。
これはシャシー側の問題だと分かってるのか? PUじゃない。PUには対策がちゃんと入っている。片方のクルマが走れないんじゃ、データ収集としても無意味だ。クルマが壊れたりギアボックスが振動で死んだりするなら、ホンダがどんなPUアップデートを持ってきても意味がない。いっそクルマを桜に送ってホンダにもう一度見てもらったらどうだ。
あるいは、その対策が新しいシャシーでは効いていないだけかもしれない。
ひとつ興味深いのは、ロングランシミュレーションの最終ラップ、キミとアロンソが12周・13周使ったソフトを履いていて、キミのほうが0.6秒ほど速かったこと。振動問題と非力なエンジンを抱えたままでは、シャシーの出来を評価するのは本当に難しい。
マカロニ・ウィングと、まだ重いマシン
マカロニ・リアウィングを開発していたらしいぞ。
おいおい。よほどアルデンテに仕上げてもらわないと困る。
この冗談、もっと笑われていいと思う。
シャシーは有望な兆候を多く見せている。しかもクルマはまだ重い。
つまりザントフォールト、モンツァ、バクー、シンガポール向けのネタがあるということだ。忙しい後半戦になる。幸い、プレシーズンの頃と比べれば風洞の使用枠はたっぷりある。
来週のレースでは、エンジンと一緒に新しいギアボックスも入るのか?
今週末の時点ですでに新型/改良型のようだ。アストンマーティンはハンガリーGPのBスペック大型アップデートの一部として、軽量化した新しいギアボックスを使っている。
ザントフォールトの新型PU、そして予選予想
来週のタイヤテストには新型PUが来るから、俺はそこまで心配していない。新型が今のと同じ振動を出すとは思えない。直す時間はかなりあったはずだ。
新型PUはピレリテストでは使えない。ルールで認められていない。おそらくフィルミングデーで走らせることになる(つまり200km制限、しかもピレリが用意するデモ用タイヤに限定される)。
オトマー・サフナウアーがポッドキャストで話していたところによると、チームは両車ぶんのアップデートを持ち込むために相当な無理をした。ただ現状スペアパーツが足りていないので、クルマを攻めさせていないらしい。このアップデートにはまだ伸びしろがある。まだ初日だ。
Q1を抜け出せるだけの進歩をしたかどうかを判断するには、まだ早すぎる。ランスのリアサスの件は明らかに理想的ではなかったが、あのスピンを止めてウォールに刺さらずに済ませたのは見事だった。疑問なのは、2時間以上あったのになぜFP2に戻せなかったのかということ。映ったときのマシンはバラバラで、まるで旧スペック車を組み直しているようにも見えた。両車を一日走らせられないというのは、まさに数ページ前にパーツ不足の話をしたときに懸念していたことだ。このチームはまた準備不足で、カーフュー破りまでしてクルマを組んでいる。
振動がまた報告されているのも非常に気がかりだ。チームは明らかに大幅な軽量化をして性能を取りにいった。その減量が、またシャシーを通じてあの悪い振動を呼び戻したのではないか。新スペックのホンダエンジンには、それを助ける対策が入っているのか。ホンダはアストンが喉から手が出るほど欲しがっている50馬力超を引き出せるのか。そうであってほしい。そこでようやく、そこそこ戦えるエンジンを積んだニューウェイ車の本当の出発点を評価できる。
50馬力という数字はイタリアメディア発の噂として広まったもので、ホンダ・レーシング(HRC)のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎氏は「その数字に届いてほしいとは思うが、かなり高い数字だ。噂にすぎないと思う」と否定している。
ドライバー市場のほうを見ると、アロンソは来年もアストンに乗るか、あるいはF1を去るかのどちらかに見える。もし去るなら、後任として順当なのはカルロス・サインツだろう。複数回の優勝経験があり、リードドライバーとして機能し、開発能力もしっかりしていて、しかもウィリアムズに売り込まれた約束に不満を抱えている。
仮にランスが抜けるなら(可能性は低いと分かっているが)、角田裕毅と組ませたい。堅実なセカンドドライバーで、良いスポンサーを連れてきて、ホンダと日本のファンも喜ぶ。もしマックスがマクラーレンの席を取ってオスカー・ピアストリが押し出され、レッドブルがオリバー・ベアマンを選ぶなら、ピアストリにもここに来る目はある。ピアストリは今季あまり良くなくて、今のランドと比べると調子を外している。
ホンダの出来次第では、シーズン最後の5戦あたりまでにアウディとやり合えるようになっていると見ている。
明日の予選予想は、アロンソP17、ストロールP18。これより悪くならないことを祈るばかりだ。そうなれば、新しい設計の方向性にとっては前向きなスタートになる。
待望のアップデートがこれではモチベーションも下がってしまうな。ホンダとアストンは踏ん張りどころだ
出典:F1Technical.net、The Race

