F1 2026レギュレーション修正まとめ マイアミGPから何が変わったのか

2026年から始まったF1の新規則は、開幕からわずか3戦でマイアミGPでの初の修正を迎えることになった。FIA、F1、各チーム代表、パワーユニットメーカー、FOMがオンライン会議で合意した修正パッケージは、予選のエネルギーマネジメント、決勝の安全性、レーススタート、ウェットコンディションの4領域にわたる。

直接的な引き金となったのは、第3戦・日本GPでハースのオリバー・ベアマンが喫した50Gの大クラッシュだった。アルピーヌのフランコ・コラピントが省エネモード(リフト&コースト)で減速していたところに、ブーストモードのベアマンが時速50km/hの速度差で追突。ドライバー全員の懸念事項だった「閉鎖速度差」が現実の事故として表面化したのだ。

あわせて、フェルスタッペンによる「Mario Kart」「Formula E にステロイドを打ったようなもの」という新規則批判、予選で頻発するスーパークリッピングやリフト&コーストへの不満も無視できないレベルに達していた。FIA技術ディレクターのNikolas Tombazisは、ターボラグ起因の異常に遅いスタートが頻発するリスクについても懸念を示しており、第1戦オーストラリアGPでのコラピントとリアム・ローソンのニアミスを具体例として挙げている。

目次

マイアミGPからの修正項目一覧

修正は大きく4つの領域に分かれる。詳細はこの後それぞれ解説するが、まず全体像を押さえておきたい。

1. 予選のエネルギーマネジメント

  • FIAが必要に応じて予選の最大充電量を7MJまで引き下げる権限を獲得(公式声明では「8MJから7MJへ削減」)
  • スーパークリッピングのピーク出力を250kWから350kWへ引き上げ(決勝にも適用)
  • 代替の低エネルギー上限を適用できるレース数を8戦から12戦に拡大

2. 決勝の安全性と一貫性

  • ブーストモードによる出力上昇を+150kWに上限設定
  • MGU-Kデプロイメントをゾーン別に差別化(キー加速ゾーン350kW/それ以外250kW)
  • フォーメーションラップ開始時にエネルギーカウンターをリセット

3. レーススタートの安全対策(マイアミGPでテスト後、シーズン残りでの採用確定)

  • 低出力スタート検出システムの導入(自動MGU-Kデプロイで最低限の加速確保)
  • 対象車のリア・サイドにフラッシングする視覚警告灯

4. ウェットコンディション

  • インターミディエイトのブランケット温度引き上げ
  • 最大ERSデプロイメント削減(トルク抑制)
  • リアライトシステムの簡素化
  • 雨天時のブーストモード使用禁止
  • アクティブエアロのストレートモードは指定ローグリップゾーンの部分稼働のみに制限

予選を「on the limit」に戻すためのエネマネ修正

最大の論点は、予選を再び限界走行の場に戻すことだった。2026年規則のもとでは、ドライバーがバッテリーを充電するためにスロットルから足を離す「リフト&コースト」や、フルスロットルのまま発電に回す「スーパークリッピング」が予選アタックで多用され、ラップが「on the limit」ではなくなっていた。

FIAが合意した修正は3つある。第一に、予選における1ラップあたりの最大充電量を従来の8MJから7MJへ削減する。ただし、ここには注意が必要である。PlanetF1の報道によれば、マイアミGP時点ではプラクティスで9MJ、予選で8MJ、決勝でオーバーテイクモード使用時に9MJ、通常時に8.5MJの充電上限が維持されており、即座の一律削減は行われていない。実態は「FIAが必要に応じて予選の充電上限を7MJまで引き下げられる権限を獲得した」と理解するのが正確である。

第二に、スーパークリッピングのピーク出力を250kWから350kWへ引き上げる。これは予選・決勝の両方に適用される。逆説的に聞こえるが、出力を上げて短時間で充電を済ませることで、1ラップあたりのスーパークリッピング時間を約2〜4秒に抑える狙いだ。マクラーレンのアンドレア・ステラ代表が冬季テスト時から提案していた施策でもある。

第三に、代替の低エネルギー上限を適用できるレース数を8戦から12戦に拡大する。サーキット特性に応じてFIAが充電上限をさらに絞れるレースが、シーズンの半分まで増えたことになる。

決勝の安全性と一貫性を高める変更

決勝に関しても、ベアマンクラッシュを受けた安全対策が盛り込まれた。

まず、ブーストモードによる最大出力上昇を+150kWに制限する。ただし、現行のアクティベーション時点ですでにそれを上回る出力が出ている場合はその水準を維持する。これは前後車間の急激な速度差を抑え、ベアマンの事故のような閉鎖速度差を縮める狙いがある。

また、MGU-Kのデプロイメント出力をゾーン別に差別化する。コーナー出口からブレーキングポイントまでの「キー加速ゾーン」(オーバーテイクゾーンを含む)では従来通り350kWを維持するが、それ以外の区間では250kWに制限される。エネルギーの使い所をオーバーテイクと加速に集中させ、ストレート終盤の不自然な減速を緩和する設計だ。

あわせて、フォーメーションラップ開始時にエネルギーカウンターをリセットする手当ても入った。開幕戦から指摘されていた、システム上の不整合に対する是正措置である。

レーススタートに導入された「低出力スタート検出」

レーススタート関連は、マイアミGPで実戦テストされた上で、5月8日にシーズン残りでの正式採用が確定した項目である。

新システムの名称は「低出力スタート検出システム(Low Power Start Detection System)」。クラッチリリース直後の加速度をセンサーで監視し、異常に低い加速が検出された場合に自動的にMGU-Kをデプロイし、最低限の加速を確保する仕組みだ。これにより、スタートでマシンが立ち往生して後続から追突される事態を防ぐ。

同時に、対象マシンのリアおよびサイドの視覚警告灯がフラッシングすることで、後続ドライバーへ視覚的に異常を伝える。Tombazisは「これはあくまで安全装置であり、競技上の優位を生む仕掛けではない」と強調しており、チームが本システムを悪用する動きには厳しく対処する方針も示している。

ウェットコンディションの安全強化

4つ目の柱はウェット対策である。2026年マシンの強い電動トルクが、低グリップ路面でいかに制御しにくいかが開幕から指摘されてきた。

主な変更は次の通り。インターミディエイトタイヤのブランケット温度を引き上げ、装着直後のグリップを改善する。最大ERSデプロイメントを削減してトルクを抑え、低グリップ下での車両コントロール性を高める。リアライトシステムを簡素化し、視認性と後続ドライバーの反応時間を改善する。

さらに、RacingNews365の続報によると、雨天時にはブーストモードの使用が全面禁止となる。最大350kWの追加パワーを湿った路面で開放することの危険性を踏まえた措置だ。アクティブエアロのストレートモード(X-Mode)についても、雨天時は指定された低グリップゾーンでの「部分稼働」のみに制限される。

「メス」であって「バット」ではない

今回の修正パッケージについて、メルセデスのトト・ウォルフ代表は「メスを使うべきであって、バットを振り回すべきではない」と表現した。シーズン3戦のデータを基にした第一弾のカリブレーション(微調整)であり、規則の根本を書き換える性質のものではない、というのが当事者たちの共通認識である。

フェルスタッペンは修正後も「変更は不十分」とのスタンスを維持しており、より抜本的な見直しは2027年以降にずれ込む見通しだ。実際、FIAは5月8日にすでに2027年からの追加変更を公表しており、ICEの出力を50kW引き上げ、ERS展開出力を50kW引き下げることで、エンジン側の比重を60対40に戻す方向で動いている。

今後の注目ポイント

マイアミGP時点では、低出力スタート検出システムが実戦でどう機能するかが最大の見どころだった。今後は次の3点に注目したい。第一に、スーパークリッピングのピーク出力引き上げが、予選アタックのリズムをどこまで自然に戻すか。第二に、ゾーン別MGU-Kデプロイメント制限が、決勝のオーバーテイクシーンにどのような影響を及ぼすか。第三に、FIAが新たに権限を得た「7MJへの引き下げ」を、どのサーキットでいつ発動するか。

これらの修正が「20%しか解決しない」とF1関係者の一部が漏らしているとの報道もある。より大きな変革は2027年に持ち越されることになるが、まずはマイアミGP以降の数戦が、今回のカリブレーションの効き目を測る試金石となる。

関連用語

  • アクティブエアロ — 2026年〜の可動ウイング機構。ストレートモードとコーナーモードを切り替える
  • オーバーテイクモード — DRSに代わる、ドライバー操作の追加電力モード
  • スーパークリッピング — フルスロットルのまま発電に回す動作
  • リフト&コースト — スロットルを離して回生・節約する走り方

出典:FIA公式声明、formula1.com

最終更新:2026年5月

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