ホンダ ADUO第1回評価がカナダGP後に確定 $8M恩恵と230時間ベンチ稼働で開発加速へ

カナダGP後に第1回ADUO評価 ホンダの「10%デフィシット枠」入りが現実味

FIAは2026年から導入された新パワーユニット規定の格差是正策「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)」について、第1回評価をカナダGP後に実施することを正式アナウンスした。バーレーンとサウジアラビアの中止でカレンダーが組み変わったため、当初予定よりも前倒しでの初評価となる。アストンマーティン+ホンダ陣営はマイアミGPで主要トラブルだった振動問題に決着をつけ、両ドライバーが揃ってレースを完走するという復調の足掛かりを掴んだばかり。その流れに、規則承認済みのADUO恩恵が重なる形になる。

WMSCはすでに、ベンチマーク比10%超のパワーユニット性能不足を抱えるメーカーに対し、テストベンチ(ダイナモ)稼働時間を230時間追加、開発コストの上方修正を$8M(約12億円)、コストキャップそのものの下方調整を$11M(約16億円)まで認める形でADUOを拡張。性能不足の閾値も従来の8%から10%へ引き上げており、ホンダはこのカテゴリ入りを前提とした開発計画を組み直していると伝えられている。3回の評価サイクルはカナダGP後、ハンガリーGP後、そして11月1日のメキシコGP後に設定された。

振動はベンチマークから退場、しかしポイント圏は遠い

5月のマイアミGPでアストンマーティンはアロンソ・ストロール両者がレースを完走させ、シーズン序盤を支配していた振動問題に区切りをつけた。プレシーズンテストから一貫してドライバーの神経損傷リスクとバッテリー破損のリスクを抱え続けていたPUは、ホンダがマイアミに向けて投入した暫定スペック変更でようやくレース距離を走り切れる水準に達したことになる。

もっともペースは依然として最下位クラスにあり、コンストラクターズではキャデラックと最後尾を争う位置。アロンソは「我々が他チームに追いつくには数か月単位の時間が必要だ」と明言しており、振動問題の克服はあくまで「スタートラインに立った」段階という認識が共有されている。

ギアボックス問題

マイアミ週末で表面化したのが、アストンマーティンが自社開発したギアボックスのシンクロナイゼーション問題である。アロンソは予選セッションを通してギアボックスの挙動に苦しみ、「あらゆるブレーキングポイントで同期がズレる。コーナー脱出での加速が引き出せず、ダウンシフトはバラバラのタイミングで降りてくる」と症状を説明した。

原因は2026年規定下の運転パターンに自社ギアボックスが追従できていない点にあるとされ、現行フォーマット特有の「高回転・低ギア」を多用するコーナリングとブレーキングに対し、ギア比の連携と変速制御が破綻しているとの指摘がある。アストンマーティンが完全な自社設計ギアボックスを採用するのは2008年以来で、ホンダPUとの統合経験が浅い領域でもある。一部報道では、根本的な再設計には最大6か月、すなわち7月のハンガリーGP前後までの時間を要する可能性が示されている。

アロンソ自身は「カナダGPに向けた修正項目の1番目はギアボックスだ。モントリオールの強烈なブレーキングではこの挙動を改善しないと話にならない」と語っており、ADUOの第1回評価が行われるカナダGPはホンダPUの性能評価だけでなく、自社ギアボックスの実戦テストの場にもなる。

日本のホンダファンが追うべき視点

HRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)は2026年シーズンを「2022年のF1復帰決定からゼロから再構築した新世代チームのデビュー戦」と位置付けてきた。RA626Hの早期トラブルはHRCにとって痛手だが、ADUO適用が現実味を帯びることでテストベンチ稼働時間と開発予算という具体的なリソースを獲得できる見通しが立ってきた。日本のファンにとっては、HRC栃木研究所でのベンチテスト体制とドイツ・ザクスハイムにあるホンダ・レーシング・コーポレーション・ヨーロッパ(HRC EU)のサポート体制がフル稼働する局面に入ったことを意味する。

もう一点、角田裕毅はホンダPU陣営ではなく、2026年は日本人ドライバーとホンダPUが直接結びつかないシーズンとなった。それでも、HRCがマニファクチャラーとして2026年新規定で実績を残せるかどうかは、将来的に日本人ドライバーがホンダPU搭載車に戻る可能性にも関わる中長期的なテーマである。

「凍結時代」とは違う、開かれた格差是正

2014年からのV6ハイブリッド時代では、PU凍結ルールの厳格さによりホンダ・ルノー陣営が長期間にわたって性能不足を引きずる事態を招いた。当時のFIAは「トークン制度」と呼ばれる部品ベースの開発許容枠を設けたが、運用が複雑で実効性に乏しく、結果としてメルセデスの圧倒的優位を許す形になった。ADUOは凍結期間中でも「金額」「ベンチ時間」「コストキャップ」という測定可能な指標で開発余地を与える点で、当時のトークン制度よりも踏み込んだ救済枠組みとなっている。

今後の注目ポイント

  • カナダGP(ラウンド5)でアストンマーティン+ホンダがどの程度のペースを示すか 振動問題克服後の真の競争力が判明する初の高速サーキット
  • ギアボックスのシンクロナイゼーション問題に対する短期的な暫定対策がカナダGPまでに完成するか
  • ハンガリーGP後の第2回評価までに、ホンダがADUO枠で投入した新スペックの効果が確認できるか
  • 同じく性能不足が指摘されるアウディが、初回評価でADUO適用対象に含まれるかどうか ホンダ単独適用なら救済枠の意味合いが変わる

出典:PlanetF1、Motorsport.com

PlanetF1Motorsport.com

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