5週間の春休みを経て、F1は第4戦マイアミGPで再始動する。バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止により生まれた異例のブランクは、各チームにとって開発を加速させる絶好の機会となった。フェラーリのフレデリック・バスール代表は「マイアミから新たなチャンピオンシップが始まる」と宣言。全チームがアップグレードを投入する今週末、開幕3戦で築かれた勢力図は大きく塗り替えられる可能性がある。
開幕からメルセデスが圧倒的な強さを見せ、3戦全勝でコンストラクターズ選手権をリード。キミ・アントネッリがドライバーズ選手権首位に立ち、ジョージ・ラッセルが僅差で追う展開が続いている。しかしバスールは「全チームがマイアミにアップデートを持ち込み、ソフトウェアの最適化にも時間をかけてきた。だからこそ新たなチャンピオンシップが始まると言ったのだ」と語り、春休みの開発競争がメルセデスの独走を止める転機になると見ている。
マクラーレン:マイアミとカナダで「完全な新車」を投入
最も大胆なアップグレード計画を掲げているのがマクラーレンである。アンドレア・ステラ代表は「マイアミとカナダにかけて、完全に新しいMCL40を送り出す」と明言した。モノコックなどのホモロゲーション構造こそ変わらないが、空力面を中心にほぼ全面的な刷新が行われる見通しだ。
マクラーレンは開幕時点でメルセデス製の新型パワーユニットとの統合に苦戦し、中国GPでは2台ともスタートできない事態にまで陥った。しかし日本GPではピアストリが2位でフィニッシュし、パッケージの理解が急速に進んでいることを示した。ステラは「この規模のアップグレードは我々だけでなく、ほぼ全チームが持ち込むだろう」と冷静な見方も示しつつ、メルセデスへの「反撃」を明確に宣言している。
フェラーリ:空力+パワーユニットの二段構えアップグレード
フェラーリはエアロダイナミクスとパワーユニットの両面からアプローチする。バーレーンGP向けに開発されていた改良型フロアを中心とする空力パッケージに加え、冷却管理の見直しや軽量化パーツも投入される。4月22日にモンツァで実施されたプライベートテストでは、すでにこれらのアップデートをSF-26に組み込んで検証が行われた。
さらに注目すべきはパワーユニット面の動きである。フェラーリはメルセデスに対して15〜30馬力のパワー不足を抱えているとされ、バスールによればこのデフィシットはラップタイムで約1秒に相当する。2026年レギュレーションで新たに導入されたADUO制度のもと、フェラーリはパワーユニットのアップグレードが認められる見込みだ。
ADUOは2026年から導入されたパワーユニットの開発制限に関する新制度で、シーズン中のPUアップグレードに一定の枠を設けつつ、パフォーマンス格差が大きいメーカーには追加の開発機会を与える仕組みである。メルセデスとの差が大きいフェラーリは、この制度を活用してシーズン中にICE(内燃エンジン)の改良を行える可能性がある。
ウィリアムズ:28kgの重量超過という根本課題に着手
ウィリアムズのFW48が抱える最大の問題は、最低重量を28kgも上回っているという事実である。4度のクラッシュテスト不合格を経て大幅に遅れたシャシー開発の影響が重くのしかかっており、チーフテクニカルオフィサーのパット・フライは「重量を落とすための技術的なステップはすでに特定されている」と述べている。
マイアミでは最初の軽量化パッケージが投入される予定だが、アレクサンダー・アルボンは「改善はするが、魔法のような解決策ではない」と冷静なコメントを残した。ウィリアムズの本格的な軽量化はイタリアGPまでに段階的に進められる計画で、最終的には最低重量を下回り、バラストの配置でバランスとタイヤデグラデーションの改善が可能になるという。その際の見込みゲインは1周あたり約1秒とされている。
キャデラック:初のホームレースで「1秒削減」を目指す
F1に新規参戦したキャデラックにとって、マイアミGPは初のホームレースとなる。特別リバリーも公開され、チームとしての意気込みは高い。セルジオ・ペレスは「明らかに今すぐ1秒が必要だ。マイアミに大きなアップグレードを持ち込むことを本当に期待している」と語った。
日本GPの予選では中団最下位から約1.2秒遅れのタイムを刻んでおり、ダウンフォースの不足が最大の弱点と分析されている。一方で車体のバランス自体はそれほど悪くないとされ、空力パッケージの改善が直接的なタイム短縮につながる余地は大きい。日本GPではペレスのペースが大幅に改善し、「ここまでで最も強いレース」という評価を得たことも、チームの開発の方向性が間違っていないことを示唆している。
各チームのアップグレード比較
各チームがマイアミに持ち込むアップグレードの方向性は、それぞれの弱点を如実に反映している。メルセデスに次ぐ総合力を持ちながらPU統合で出遅れたマクラーレンは空力の全面刷新で勝負に出る。フェラーリはパワーデフィシットの解消を最優先に、空力とPUの二正面作戦を展開する。ウィリアムズは性能以前に重量という基本課題の解決が先決であり、キャデラックはダウンフォース不足を補う初の大型開発で中団に近づくことが目標だ。
SKY Sportsの解説者マーティン・ブランドルは今週末を「シーズンの再ローンチ」と表現し、「これらの車にはまだ膨大な伸びしろがあり、トップ8のドライバーなら誰でもチャンピオンシップを獲れる可能性がある」と大幅な勢力変動を予測している。
90分に延長されたFP1がカギを握る
マイアミGPはスプリント週末フォーマットで開催され、決勝前の通常フリープラクティスは金曜のFP1のみとなる。FIAはこのセッションを通常の60分から90分に延長することを決定した。延長の理由は3つあり、日本GPからの長いブランク、マイアミから適用される複数のルール微調整への対応時間の確保、そしてスプリント週末における練習時間の限定性である。
大規模アップグレードを持ち込む各チームにとって、この30分の追加は非常に重要な意味を持つ。新パーツの相関確認、セットアップの方向性決定、タイヤの挙動把握といった作業を1セッションで完了させなければならないだけに、90分をいかに有効活用するかがスプリント予選以降のパフォーマンスを左右する。
今後の注目ポイント
- マクラーレンの「新車」がメルセデスとのギャップをどこまで縮められるか。カナダGPでの第2弾アップグレードとの合算効果にも注目
- フェラーリがADUO制度を利用したPUアップグレードをいつ実戦投入するか。マイアミで空力面の効果が確認できれば、PU改良との相乗効果でトップ争いに絡む可能性がある
- ウィリアムズの軽量化がどの程度のタイムゲインに結びつくか。イタリアGPまでの段階的改善がスケジュール通りに進むかが中長期の鍵
- キャデラックが中団との差を1秒縮められれば、シーズン後半に向けた開発の土台が固まる。初のホームレースでの結果がチームの士気と開発リソースの投入判断に影響する
- メルセデスが開幕3連勝の勢いを維持できるか。アントネッリは昨年のマイアミでラッセルを上回った実績があり、ドライバーズ選手権首位を固められるかに注目
出典:Formula1.com、Autosport

