トップから1秒遅れのRB22 ワシェ「最後のチャンス」はマイアミ大型アップデート

レッドブルのテクニカルディレクター、ピエール・ワシェの立場が日に日に悪化している。2026年開幕3戦で6位に沈み、アルピーヌにも抜かれた屈辱的なスタート。その責任の矛先が、RB22のシャシー開発を統括するワシェに向かい始めた。複数メディアが、内部スタッフの不満と退任観測を相次いで報じている。

2024年のエイドリアン・ニューウェイ退任、2024年夏のクリスチャン・ホーナー解任、2024年末のジョナサン・ホイットリー退任、そして直近で報じられたばかりのジャンピエロ・ランビアーゼのマクラーレン移籍報道に続き、レッドブルの人的基盤が音を立てて崩れていく中、今度はニューウェイの後継として技術部門のトップに立つフランス人の番が来たというわけだ。

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RB22の深刻なシャシー問題 トップから1秒の差

2026年のレギュレーション変更を前に、多くの専門家はレッドブルの弱点は新開発のフォード製パワーユニットだと予想していた。F1パワーユニット開発の経験がない米フォードとのタッグは明らかにリスクが高かったからだ。だが蓋を開けてみれば、パワーユニットは事前の懸念ほど悪くなく、メルセデスには届かないもののフェラーリとは互角に近い水準で戦えている。

問題はシャシーだった。複数の報道によれば、RB22はトップのメルセデスから1秒以上遅れており、その約0.8秒分がシャシー起因とされる。さらに深刻なのは車重の問題で、最大12kgもの超過が指摘されており、これだけで1周あたり0.4秒のロスに相当する。低中速コーナーでのトラクション不足、狭い動作ウィンドウ、そしてシミュレーターと実走間の相関性の崩れでいずれもチーム内の設計哲学に深く関わる問題となり、一夜にして解決できる類のものではない。

フェルスタッペン自身は鈴鹿後の取材で「エネルギー回生システムはうまく機能している。相関性や較正は改善の余地があるが、パワーは我々の最大の弱点ではない」と発言し、暗にシャシーへの不満を示した。チームメイトのハジャーはさらに踏み込んで、「マシンは本当にドライブできない、危険とさえ言えるレベルだ。エンジンは問題ない。シャシーがひどい、低速コーナーで遅い」と公然と批判している。ドライバー2人が揃ってシャシーを名指しで否定する光景は、極めて異例だ。

ワシェの「1秒公約」と内部告発

事態をさらに悪化させているのが、ワシェ自身の発言履歴だ。複数の報道によれば、ワシェは2025年12月に社内会議で「RB22は2026年のレーシング・ブルズ製マシンより1秒速い」と公約していた。両チームは同じレッドブル・フォードPUを使う「兄弟チーム」であり、シャシー性能を直接比較できる絶好の指標となる。

ところが開幕後、この公約は完全に空手形となった。フェルスタッペンは鈴鹿予選でQ2敗退して決勝8位、同じ週末にレーシング・ブルズのリアム・ローソンが8番グリッドを獲得するという逆転現象が起きている。さらに衝撃的だったのが、レッドブル内部の人物とされる関係者が「フェルスタッペンがVCARB03(レーシング・ブルズの2026年マシン)に乗り換えたほうが、もっと前からスタートできるだろう」と語った件だ。自チームのNo.1ドライバーを否定する匿名コメントが外部メディアに出る状況は、組織が内部から崩れ始めていることを如実に示している。

スキナー退職とシャック離脱 技術部門の空洞化

ワシェのリーダーシップへの不満は、シーズン開幕前から表面化していた。チーフデザイナーを務めていたクレイグ・スキナーは、2026年シーズン開幕直前に突如退職。「スキナーの突然の離脱はワシェとの設計方針の対立が原因だった可能性がある」と推測記事を掲載している。

加えて、ベテランエンジニアのオーレ・シャックも既に退職済み。複数の関係者によれば、技術スタッフの間では「ワシェとロラン・メキース体制が進める方向性」に対する不信感が広がっているという。組織のトップダウン改革に現場がついていけていない、という構図だ。

レッドブルの技術部門は長年ニューウェイを頂点とするピラミッド型の組織で、設計哲学も彼の空力思想に深く依存してきた。2024年のRB20、2025年のRB21はいずれもニューウェイ時代の遺産の上に成り立っていたが、RB22は「ワシェ単独で挑む初めてのレギュレーション移行期」のマシンだった。初の独力作業が結果として「ニューウェイ依存の深さ」を浮き彫りにしてしまったとも言える。

外部からの冷ややかな視線 「荷が重すぎる」

元F1ドライバーのラルフ・シューマッハはドイツ・スカイスポーツの番組で、ワシェについて「彼には荷が重すぎる」と率直に語った。ただしラルフは即時解任までは求めず、「経験者か若手、どちらかを新たに迎え入れるべきだ」と人材補強の必要性を説いている。

レッドブルのチーム代表ロラン・メキースは表向き結束を強調しているが、「2025年のRB21開発を最後まで続けた決断が、2026年の出遅れにつながった」と認める発言をしている。これは戦略的な判断ミスを技術部門に一定程度帰属させる物言いであり、ワシェを直接擁護しているとも言い難い。

マイアミGPが「最後のチャンス」になるか

複数のメディアが共通して指摘しているのが、5月1〜3日のマイアミGPに向けて投入される大型アップデートパッケージの意味合いだ。レッドブル内部では「これがワシェの最後のチャンス」という見方が広がっているとされる。十分な改善が得られなければ、ミルトンキーンズのトップが技術部門の指揮権を剥奪される可能性すらある、というのが現在の空気感だ。

フェルスタッペンは2028年末までレッドブルと契約しているが、日本GPの週末にメディアに対し「2026年レギュレーションへの不満」を理由に今年限りでの引退も選択肢にあると語っている。夏休みまでにランキング2位以内に入れなければ離脱条項が発動する可能性があり、ランビアーゼのマクラーレン移籍が決まった今、ワシェの去就はフェルスタッペンの判断にも少なからぬ影響を与えるだろう。

今後の注目ポイント

  • 5月1〜3日 マイアミGP:大型アップデートの投入。効果次第でワシェの去就が決定的に動く可能性
  • 後任候補:現時点で明確な後継者は浮上していない。ニューウェイ後継を探した当時と同様、外部から大物を招聘できる組織的余力があるかが問われる
  • フェルスタッペンの判断:夏休み前後にある離脱条項の発動条件と、本人のモチベーション維持の両面で注視が必要
  • メキース体制への波及:技術部門の責任論がチーム代表の責任論に転化するかどうか。ホーナー解任の時のように、経営側の意思決定が前倒しされる可能性もある
  • ハジャーの処遇:新人ながら先輩のフェルスタッペンと並んで公然とマシンを批判した立場。長期契約ドライバーとしてのポジションが試される局面に入っている

出典:GPblog、PlanetF1

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