マックス・フェルスタッペンのレースエンジニアとして4度のワールドチャンピオン獲得を支え、現在はレッドブルのヘッド・オブ・レーシングも兼務するジャンピエロ・ランビアーゼが、2028年からマクラーレンに移籍することが複数の欧州メディアから報じられた。現行契約は2027年末まで残っており、満了後の電撃移籍という形になる。
レッドブルからはここ2年で、クリスチャン・ホーナー前チーム代表の解任、エイドリアン・ニューウェイのアストンマーティン移籍、ジョナサン・ホイットリーのアウディ移籍、ヘルムート・マルコ顧問の退任と、ミルトンキーンズ本拠地を支えてきた中核人材が次々と離脱してきた。ランビアーゼはその中でもフェルスタッペン本人が「彼がいなければF1を去ることも考える」と公言してきた最重要の側近であり、今回の報道は単なる人事ニュースにとどまらず、フェルスタッペン自身の去就にまで波及する性質のものだ。
オランダ発のスクープ 起点はデ・リンブルガー
今回の報道は現地時間4月9日の朝、オランダ地方紙デ・リンブルガーのジャッキー・マルテンス記者によって最初に伝えられた。直後にレッドブル番記者として知られるデ・テレグラーフのエリック・ファン・ハーレンも続報を出し、複数のソースが同一の情報を指し示していることを示唆した。その後、英国のオートスポーツ、スカイスポーツ、プラネットF1、クラッシュネット、レーシングニュース365などが独自ソースで裏取りを進め、同日中に欧州メディア全体に広がった。
レッドブルとマクラーレンのいずれも公式コメントを拒否しているが、複数社が独立したソースで同方向の情報を確認している点から、報道の信頼性は高いと見られる。
契約満了後の円満移籍 2028年から新体制入り
報道によれば、ランビアーゼの現行レッドブル契約は2027年末まで有効で、今回の移籍はその満了を待って実行される。つまり2026年・2027年の2シーズンは引き続きフェルスタッペンのレースエンジニア兼ヘッド・オブ・レーシングとしてミルトンキーンズに残る。即座の離脱ではなく、中長期の人事戦略として決着した形だ。
マクラーレンでのポジションは「ヘッド・オブ・レース・エンジニアリング」になると報じられている。チーム代表アンドレア・ステラの負荷を軽減し、運営面の責任を一部肩代わりする役割で、ステラ自身の地位には変更がないという見方が有力だ。一方でオランダメディアの一部は、ステラがフェラーリへ復帰した場合の後継候補としてランビアーゼを推す声もあると伝えている。どちらに転んでもマクラーレンにとって損のない布陣であり、長期的な幹部層の継承計画として評価できる。
アストン、ウィリアムズを振り切ったマクラーレン
ランビアーゼ争奪戦にはマクラーレン以外にもアストンマーティンとウィリアムズが名乗りを上げていた。特にアストンマーティンは、ニューウェイが現在務めているチーム代表職の後継としてランビアーゼに白羽の矢を立てていたと報じられている。ニューウェイ本人が「早ければ1年でチーム代表職から退く可能性がある」と示唆してきた中で、後任TPとしてレッドブル出身者を引き抜く構想は筋が通っていた。
しかしランビアーゼは最終的にアストンマーティンのTPオファーを断り、マクラーレンを選んだ。複数のメディアが「天文学的」と形容する給与条件、そしてウォーキングで続く元レッドブル組との再合流が決め手になったと見られる。
+α 他チーム比較 マクラーレンに集まる「元レッドブル」
ランビアーゼのマクラーレン移籍は、ここ数年続く「マクラーレンがレッドブルから幹部を引き抜く」流れの最新事例に位置する。過去の事例と並べると、ウォーキングの人材補強が計画的に進んできたことがわかる。
| 人物 | レッドブルでの役職 | マクラーレン合流時期 | マクラーレンでの役職 |
|---|---|---|---|
| ロブ・マーシャル | チーフ・エンジニアリング・オフィサー | 2024年 | テクニカルディレクター |
| ウィル・コートニー | ヘッド・オブ・レース・ストラテジー | 2026年1月 | スポーティングディレクター |
| ジャンピエロ・ランビアーゼ | ヘッド・オブ・レーシング/フェルスタッペン担当レースエンジニア | 2028年(予定) | ヘッド・オブ・レース・エンジニアリング |
マーシャルは2024年マシンの設計に直接影響を与えた人物で、加入後すぐにマクラーレンの空力コンセプトを刷新したとされる。コートニーは今シーズン初頭からレース戦略の中枢に入り、ランディ・シン・レーシングディレクターと連携する体制を組んだ。ランビアーゼがこの2人に続いて合流すれば、チャンピオンチームの「戦略・設計・運営」の三本柱すべてに元レッドブル組が関わる形になる。
マクラーレンは2025年にドライバーズ・コンストラクターズの両タイトルを獲得し、現時点でグリッド最強の陣容を誇る。その状態で長期の人事補強まで手を打っているのは、王朝化を見据えた動きと見るのが自然だ。アストンマーティンのようにニューウェイ1人に依存する形ではなく、レッドブル黄金期を支えた複数の実務家を分散して取り込んでいる点が大きな違いといえる。
フェルスタッペン去就問題への影響
この報道がF1界を揺らしている最大の理由は、フェルスタッペンの将来との関係にある。過去の報道によれば、フェルスタッペンは2023年ベルギーGP後の取材で、ランビアーゼとの関係について「彼がレースエンジニアでなくなるなら、自分はF1にいる理由を失う」という趣旨の発言をしている。2人は2016年スペインGPのデビューウィン以来、一貫して同じピットウォールで戦ってきた「F1史上もっとも成功したドライバー/レースエンジニア・パートナーシップ」の一つだ。
ただし今回の移籍は2028年からの話であり、少なくとも2026年・2027年は現体制が維持される。フェルスタッペン本人は2028年末までレッドブルと契約しているが、日本GPの週末にメディアに対し「2026年レギュレーションへの不満」を理由に「今年限りで引退することも選択肢にある」と語っており、ランビアーゼが去ることが決まった今、その判断にどう影響するかが次の焦点となる。
複数のメディアは「ランビアーゼの移籍そのものがフェルスタッペンを直接動かすわけではない」という見立てを示している。しかし同時に、「マクラーレン側がランビアーゼを迎え入れるタイミングで、フェルスタッペンにも門戸を開ける可能性がある」との観測も浮上している。ウォーキングは現状ノリスとピアストリの2人体制が固まっているものの、2028年のドライバーマーケットは流動的で、「元側近との再合流」というシナリオは決して荒唐無稽ではない。
今後の注目ポイント
- 5月1〜3日 マイアミGP:F1再開後の最初のメディアデイ。フェルスタッペンとランビアーゼ本人の公式コメントが初めて出る場になる可能性が高い
- レッドブルの正式コメント:現時点ではノーコメント。公式発表が出るタイミングと内容でチームの姿勢が見える
- ステラTPの去就:フェラーリ復帰の観測報道がランビアーゼ移籍と並行して出ている。ランビアーゼの役割が「サポート」なのか「後継」なのかは、ステラの決断次第で変わる
- フェルスタッペンの2026年末判断:レッドブルとの契約は2028年末までだが、現行レギュレーションへの不満を理由に今シーズン限りで去る選択肢を本人が言及済み。ランビアーゼの進退がここにどう絡むかは夏休み前後の大きなテーマになる
- アストンマーティンの後継TP探し:ランビアーゼ獲得失敗で白紙に戻った。ニューウェイの負担軽減策をどう進めるかが別軸の課題となる
出典:De Limburge、Autosport

