2026年レギュレーション修正案 6つの優先項目が判明 安全対策と予選改善が柱

FIAとF1は4月9日に開催された技術会議を経て、2026年レギュレーションの修正対象となる6つの優先項目を特定した。4月20日のチーム代表会議で合意案をまとめ、マイアミGP(5月3日)前のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)での最終承認を目指す。開幕から3戦を経て噴出した予選でのエネルギーマネジメント過多、車両間の危険な速度差、そしてドライバーたちの安全面への懸念。2026年規則が抱える構造的な問題に、F1はようやく本腰を入れて向き合い始めた。

2026年シーズンは電動パワーの比重が大幅に増した新レギュレーションのもとで開幕したが、バッテリーのエネルギー回収と放出を巡る戦略が予想以上に複雑化した。特に予選では、限られたエネルギーをいかに効率よく回収するかが最速ラップの鍵を握る状況となり、ドライバーたちは全開走行ではなくエネルギーマネジメントに追われる事態が続いていた。シャルル・ルクレールが「限界ギリギリのQ3ラップはもう存在しない」と嘆いたように、F1予選本来の魅力が失われつつあるという声は日に日に強まっていた。

ベアマンの50Gクラッシュが安全問題を最優先に押し上げた

6項目の中で最優先に位置づけられたのが、車両間の速度差に起因する安全対策である。日本GPでのオリバー・ベアマン(ハース)の50Gクラッシュが、この問題の深刻さを突きつけた。

鈴鹿でベアマンは、スプーンカーブ手前でフランコ・コラピント(アルピーヌ)に急接近した。ベアマンのマシンがブーストモードで走行していた一方、コラピントのマシンはエネルギー回生中で速度が大幅に落ちていた。その速度差は約45km/hに達し、回避行動を取ったベアマンはグラベルに飛び出してバリアに激突した。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は「一方のドライバーはパワーがほぼゼロの状態で、もう一方はマッシュルームモードを使っている。速度差が50〜60km/hに達することもある」と指摘。ベアマン自身も「ドライバーとして事前にFIAに警告していた。これは新レギュレーションがもたらした、かつてないレベルの速度差だ」と語った。

予選のエネルギーマネジメント問題:3つの修正オプション

安全問題と並んで重視されているのが、予選でのエネルギーマネジメント過多の解消である。現行の2026年規則では、ドライバーは1ラップあたりの回生エネルギー上限に達するため、予選でもリフト&コーストやスーパークリッピングを多用せざるを得ない。これが「全開アタック」を阻害し、F1予選のスペクタクルを損なっているとの批判が噴出している。

修正案として議論されているのは、主に以下の3つのアプローチである。

①スーパークリッピング上限の引き上げ(250kW→350kW):現在、スーパークリッピング時の回生出力は250kWに制限されているが、これをリフト&コースト時と同じ350kWまで引き上げる案。スーパークリッピングはフルスロットルのまま回生を行う方式のため、この上限が引き上げられればリフト&コーストの必要性が大幅に減り、ドライバーはアクセルを踏み続けたまま十分なエネルギーを回収できるようになる。

②ハーベスティング上限の引き下げ(〜6MJ/ラップ):1ラップあたりの回生エネルギー上限を現行値から大幅に引き下げ、6MJまで下げる案も検討されている。回生量が減ればドライバーは上限到達を気にする必要が減り、エネルギーマネジメントへの依存度が下がる。ただし、回生量の削減はラップタイムの低下を招く可能性があり、一部チームからは慎重論も出ている。

③アクティブエアロの自由化(予選限定):もっとも大胆な案として、予選中のアクティブエアロの使用制限を撤廃し、ドライバーが任意のタイミングでウイング角度を変更できるようにする案も浮上している。現行規則ではリフト&コースト中にアクティブエアロが無効化されるため、エネルギー回生とダウンフォースのトレードオフが発生する。この制約を緩和すれば、予選でのドライビングの自由度が大幅に広がる可能性がある。

レース中の速度低下問題にも対策を検討

予選だけでなく、レース中にストレート終盤でバッテリーが枯渇した際の急激な速度低下も、ファンとドライバーの双方から強い批判を受けている。バッテリー切れのマシンがストレートエンドで極端に減速する光景は、F1のイメージとは相容れないという指摘が多い。この問題への対策も6項目のひとつに含まれている。

スーパークリッピング上限やハーベスティング量の調整は、予選だけでなくレース中の速度差問題にも間接的に効果があると考えられている。エネルギーマネジメントの方式が統一化されれば、マシン間の展開・回生タイミングのばらつきが縮小し、結果として危険な速度差の発生頻度も下がるという論理である。

意思決定のタイムライン

FIAは今回の修正に向けて、密度の高いスケジュールを組んでいる。4月15日にスポーティングレギュレーション会議、16日に追加の技術会議が予定されており、技術面で必要な変更に伴うスポーティング規則の調整を並行して進める。

最大の山場は4月20日の会議である。通常のF1コミッション会議に近い形式で、全チーム代表に加えて2026年パワーユニットメーカーの代表も参加する。ここで技術チームが共同提案する修正案を審議し、コンセンサスの形成を目指す。合意後は電子投票を経て、FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)が正式に承認する流れとなる。

F1のステファノ・ドメニカリCEOは「予選でできるだけフルパワーで走れるようにすること、そしてドライバーが指摘する安全面の懸念を正しく解決すること」の2点を柱に掲げ、マイアミGP前にFIAから具体的な調整内容が発表される見通しを示した。

今後の注目ポイント

  • 4月20日の会議で全11チーム+PUメーカーの合意が成立するか。特にスーパークリッピング上限の引き上げ幅とハーベスティング上限の最終数値に注目
  • マイアミGP(5月3日)から新規則が適用されるのか、段階的な導入になるのか
  • アクティブエアロの自由化が予選限定にとどまるか、レースにも拡大されるか
  • 修正後のルールで速度差問題がどの程度解消されるか。次戦以降の実走データが試金石となる

出典:The Race

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