2026年F1新マシンをドライバーたちはどう見ているか 開幕戦後に賛否が真っ二つ

新レギュレーションではMGU-Hが廃止され、代わりにMGU-Kの出力が従来の120kWから350kWへと約3倍に引き上げられた。これにより、バッテリーの充放電マネジメントがレース戦略の核心となり、ドライバーにはストレート上でのリフト&コースト(アクセルを緩めてエネルギーを回収する走法)がこれまで以上に求められる。ここに3つの新モードが加わった。ストレートモード(SM) は指定ゾーンで前後ウイングが自動的に寝て空気抵抗を減らすDRSの後継機能。ブーストモードはドライバーが任意のタイミングでバッテリーのエネルギーを放出し、攻守に使える自由度の高いモード。そしてオーバーテイクモード(OTM) はストレートモードゾーン内でさらに追加のエネルギーを展開できるモードだ。これらのモードが絡み合うことで、バッテリー残量次第で直線上に大きな速度差が生まれ、レースの様相は一変した。

ノリス「史上最高のマシンから史上最悪のマシンへ」

最も辛辣だったのはディフェンディングチャンピオンのランド・ノリスだ。予選後に「F1史上最高のマシンから、おそらく史上最悪のマシンになった」と語り、決勝後もその姿勢を崩さなかった。5位でフィニッシュしたノリスは「さらにひどい。去年ほど楽しくない」と述べ、エネルギーマネジメントがレースを支配する現状に強い不満を示した。特に安全面への懸念も口にし、バッテリー残量の差によって直線上で30〜50km/hもの速度差が生じる状況を「大事故が起きるのを待っているようなもの」と表現。パワーユニットの挙動次第で一気に5台に抜かれることもあり得るとして、レースの「人工的な」性質を批判した。

フェルスタッペン「カオス。正しい言葉が見つからない」

マックス・フェルスタッペンのスタンスも一貫している。プレシーズンテストで新レギュレーションを「アンチレーシング」「ステロイドを打ったフォーミュラE」と切り捨てた4回チャンピオンは、メルボルンでも「カオス」と一蹴した。予選Q1でのクラッシュから20番手スタートとなり6位まで追い上げる走りを見せたが、規則への不満は変わらない。「F1とFIAは聞く耳を持っていると思うが、アクションにつなげてほしい。批判のための批判ではない。本来のF1、ステロイドを打った本物のF1であるべきだ」と訴えた。さらにテスト時には、勝てるマシンであっても楽しくなければ意味がないとし、F1の外に「楽しさ」を求めて別のレース活動を模索していることも明かしている。

ラッセル「勝っていたら同じことは言わない」

一方、メルセデスのジョージ・ラッセルはノリスやフェルスタッペンの批判に真っ向から反論した。ポールトゥウィンでメルセデス1-2を達成したラッセルは、ノリスについて「勝っていたら同じことは言わないだろう」とバッサリ。「ドライバーは全員自分本位だ。去年は同じエンジンでマクラーレンに負けた。今年は同じエンジンで我々が上手くやっている。それがこのスポーツだ」と述べた。さらに「過去にタイヤのデグラデーションが少なくてドライバーが最も快適だった時期は、みんな『レースがつまらない』と文句を言っていた。今度はドライバーが完全に満足していない状態で、『最高のレースだった』と言われている。両方は手に入らない」と指摘し、新規則にはもう数戦チャンスを与えるべきだとの立場を示した。

ハミルトン「すごく楽しかった」

フェラーリのルイス・ハミルトンも新レギュレーション擁護派だ。7番手スタートから4位まで追い上げた7回チャンピオンは、レース後に「楽しかった」と笑顔を見せた。「序盤からバトルに絡めたし、終盤にはいいペースが出てシャルルに迫れた」と振り返り、新マシンへの手応えを語った。VSC(バーチャルセーフティカー)でのピット判断についてはチーム戦略を擁護しつつも、「少なくとも1台は入るべきだった」とチーム無線で伝えていたことが明かされている。コーナーではメルセデスと互角だがストレートスピードで差があるとの分析で、今後のアップグレードに期待を込めた。

ルクレール「マリオカートのキノコみたい」

シャルル・ルクレールは独自の視点でレースを表現した。序盤9周でラッセルとの間で7回もリードが入れ替わるスリリングなバトルを演じたモネガスクは、新しいエネルギーモードを「マリオカートのキノコを使っているみたいだ」と例えた。3位でフィニッシュしたルクレールは、アーケードゲーム的な側面を認めつつも、レースとしてのエンターテインメント性は評価する姿勢を見せた。

ストロール「もっとシンプルで、いい音のするマシンが欲しい」

アストンマーティンのランス・ストロールはホンダPUの振動問題でリタイアに終わり、率直な不満を口にした。「もっと軽くて、サステナブル燃料を使ったいいエンジンを積めばいい。いい音がして、もう少しシンプルで、普通にいいレースができるマシンが欲しい」と語った。ただし「アストンではレギュレーションに満足していないが、ラッセルやアントネッリは今のレギュレーションで幸せだろう。立場によって意見は違う」とも認めている。

ローソン「ひたすらエネルギー管理。あまり楽しくない」

レーシングブルズのリアム・ローソンはレース中の体験をストレートに語った。「正直、レースで走っていてあまり楽しくない。常にエネルギーを管理して、エネルギーが切れて、ストレートの終わりで減速する。かなり辛い」と述べた。エンジン自体の性能には手応えを感じていたものの、レース中にトラブルが発生し、さらに順位を上げるチャンスを逃したことを悔やんだ。オーバーテイクの難しさについても言及している。

ペレス「まったく別のF1。楽しさは減った」

1年間のブランクを経てキャデラックからF1に復帰したセルジオ・ペレスは、16位で新チームの初レースを終えた。「以前のF1とはまったく違う。レースの面では間違いなく楽しさが減った」と率直な印象を語り、エネルギーマネジメントの複雑さに戸惑いを見せた。

アントネッリ「アクションが多い。チャンスを与えるべき」

メルセデスのキミ・アントネッリは2位表彰台という結果も手伝い、新規則に前向きだ。「このようなサーキットではオーバーテイクモードが非常に強力で、序盤に多くのアクションが生まれた。サーキットによって状況は変わるだろう」と冷静に分析。チームメイトのラッセルと同様、性急な結論を避けるべきとの見解を示した。

ベアマン「このサーキットがワーストケースかもしれない」

ハースのオリバー・ベアマンは週末前の段階で興味深い指摘をしていた。「アルバートパークはブレーキングゾーンが少なく、エネルギー回収が難しい。このレギュレーションにとってのワーストケースシナリオかもしれない」と分析。モンツァやジェッダも同様に厳しいコースになるとの見通しを示した。一方で「カオスにはチャンスがある」とも語り、結果的に7位入賞を果たしている。

開幕戦を終えて見えた構図

ドライバーたちの評価は、大まかに現在の競争力と相関している。メルセデス勢やフェラーリのハミルトンなど、好結果を残したドライバーは新規則に肯定的な一方、マクラーレンのノリスやレッドブルのフェルスタッペンといったマシンパフォーマンスに不満を抱えるドライバーは批判的だ。ラッセルが指摘したように、この「ポジショントーク」の側面は否めない。

ただし、安全性への懸念は立場を超えた共通テーマだ。バッテリー残量の差が生む大きな速度差、スタート手順の複雑化、ストレートモードとコーナーモードの切り替わりにおける不安定さなど、ドライバーが指摘する問題点は具体的で深刻だ。オーストラリアGPではフランコ・コラピントがスタートで発進できなかったローソンを寸前で避けるヒヤリハットも発生している。

マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、エネルギー回収・展開に関するルール変更で問題を解消できるとし、その対策は「シンプル」だと主張。来週のF1コミッションで議論される見込みだ。

今後の注目ポイント

次戦の中国GPで、2026年最初のスプリント週末となる。長い1本のバックストレートを持つ上海は、エネルギー展開の戦略がメルボルンとは大きく異なる。ラッセルも「上海ではほとんどのドライバーが1本のストレートにエネルギーを集中させるだろう」と述べており、サーキット特性によるレース展開の違いが新規則の評価を左右する可能性がある。

観戦側としては・・・サーキットによって印象が変わるだろうし様子をみてみよう

出典:Motorsport.comRacingNews365PlanetF1

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